塩酸と硫酸は何が違う?
前項で「同じ体積と濃度同士だと、中性になる」と説明しました。
例えば同じ濃度の塩酸300mLと水酸化ナトリウム水溶液300mLを混ぜると中性になりますが、それでは塩酸ではなく、硫酸300mLと水酸化ナトリウム水溶液を同じ濃度で混ぜるとどうでしょうか。
答えは酸性になる、です。
塩酸では同じ体積で中性になったのに、硫酸では中性にならないのは何故でしょうか?塩酸と硫酸は何が違うのでしょうか?
MOL(モル)とは?
塩酸で中性になるのに硫酸では中性にならない理由を説明する為には、MOLを知っておく必要があります。
MOLは国際単位系における物質量の単位になります。日本の計量法規定に基づく計量単位令によると、
6.02214076×1023の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る。)で構成された系の物質量
と定義されていますが、シンプルに、6.0×10の23乗個の「個数」だと思ってください。
極端な話ですが、コーヒー豆が6.0×10の23乗個あった場合、それはコーヒー豆が1molある、ということです。
また、ビー玉が3.0×10の23乗個ある場合は、ビー玉が0.5molある、という事になります。
MOLとは、「物質量」の事になるので、中和においてはH+及びOH-が溶液中にどれだけ含まれているか原子量を考える、という事になります。
MOL濃度とは?
「濃度を同じにする」というのは二つの意味があります。
例えば、水(溶液)100グラムの中に食塩(溶質)が20グラム含まれていたとすれば、濃度は20%と言いますが、これを質量パーセント濃度と言います。
つまり、質量パーセントとは溶液の質量[g]に対して、どれだけの溶質[g]が含まれているか?を示したものです。
対して、MOL濃度では、溶質がどれだけ含まれているかを[mol・モル・原子量]で考えます。
例えばNaOHモル量40の場合、NaOH20gを水に溶かして全体で2リッターとした場合のモル濃度を求める場合を考えると、NaOHのモル量が40ということは、NaOHを1mol集めると40gになるということです。
今回のNaOHは20gなので、0.5molとなります。
モル濃度は溶質の物質量(mol)と溶液の体積(リッター)を割る事で計算できるので、0.25mol/Lとなります。
塩酸と硫酸の違い、再び
冒頭の硫酸と塩酸の違いに戻りますが、濃度が同じで体積が同じであっても、塩酸と違い硫酸を同量混ぜ合わせても中性にはなりません。
なぜ中性にならないのか?そこで考えなければならないのは「価」です。
価とは、水素イオンや水酸化物イオンの数の事です。これが硫酸(H₂SO₄)になると、Hの課数が2つある為、molは倍になります。
その為、硫酸と水酸化ナトリウムを混ぜて中性にするときは、水酸化ナトリウムが2倍必要、ということになります。