排水流出による事故

ここでは、排水流出による事故事例をまとめました。

1.A社(日本・罰金、防止対策の徹底)

事故の概要


2022年、A社において、排水の一部から水質汚濁防止法の基準を超えるシアンが検出された。

当県への報告によると、同年11月の排水測定において最大0.1mg/Lのシアンが検出され、基準値(不検出)を超過していた。そ

の後の再測定ではシアンは検出されなかったが、県は立入検査および原因調査を実施した。


シアンは強い毒性を持つ物質であり、排出が継続した場合には水域の生態系や周辺環境への悪影響が懸念される。

本件では重大な生態被害の報告はなかったものの、排水管理体制や監視体制の不備が指摘され、地域の環境保全に対する社会的懸念を招いた。

罰金・政策変更


本件について大規模な金銭的罰金は公表されていないが、千葉県は同社に対し、排水処理設備および管理体制の改善、排水水質の継続的な監視、ならびに定期的な報告の実施を指導した。

また、環境保全協定に基づく遵守強化および再発防止対策の徹底が求められた。

2.B社(日本・製造所・捜査中)

事故の概要

2025年10月、B社が、工場敷地内の配管から基準を超える浮遊物質を含む排水を海域へ流出させた疑いで、当地域の海上保安部が水質汚濁防止法違反の容疑で責任者らを神戸地検姫路支部に書類送検した。

流出は2025年6月に発生した。

排出された汚水は姫路港付近の海域に影響し、同地域の水質管理の問題とともに、漁業・海洋環境への懸念を引き起こしたと報じられている。

現時点で明確な生態系被害の報告はないものの、法令違反として捜査・送検に至った。

罰金・政策変更 

書類送検は刑事処分につながる可能性があり、今後の裁判での判断が注目される。

企業レベルでは捜査・是正命令・改善措置が求められる見込み。詳細な罰金額は公表されていない。

3.C社(米国・食品加工業・罰金: 約1.81億円相当)

事故の概要

C社は、ペンシルベニア州にある排水処理施設において、過去9年間で600回以上にわたりNPDES(国家汚染物質排出削減制度)許可に違反しました。

当該施設では、豆類や野菜などの工業的食品加工に伴って発生する排水を処理した後、Oil Creekへ放流しています。

これらの違反により、排水はCodorus Creekの支流へ流入し、さらにサスケハナ川およびチェサピーク湾流域へと流れ込みました。

環境検査の結果、排水温度の基準超過、浮遊固形物および目視可能なスカム(浮遊汚泥)の発生、ならびに処理設備の運転・保守管理要件の不遵守が確認されました。

罰金・政策変更

C社は、米国のClean Water Act(連邦水質汚濁防止法)に基づき提訴されました。

その結果、民事制裁金として約115万米ドル(約1.81億円)の支払いが命じられました。

また、排水処理システムの改修・高度化が義務付けられ、あわせて排水の監視体制の強化およびNPDES許可に定められた排出基準の厳格な遵守が求められました。

4.Ⅾ社(英国・上下水道事業・罰金: 約256億円相当)

事故の概要

Ⅾ社 は、下水処理施設の老朽化および不十分な維持管理により、例外的状況(豪雨時等)ではないにもかかわらず、未処理または不十分に処理された下水(raw sewage)を河川へ長期間にわたり排出していた。

本件により、河川の水質悪化、溶存酸素の低下、生態系への深刻な影響(魚類の大量死等)が発生し、周辺住民の生活環境や公衆衛生にも悪影響を及ぼした。

罰金・政策変更

英国の規制当局Ofwat は下水処理・排出違反に対し1億0,450万ポンド配当支払いに関する規制違反を含め、合計約1億2,270万ポンド(約256億円)の制裁金を科した(英国水道業界史上、過去最大規模)。

また、同社には下水処理システムの抜本的改善および厳格な監督下での是正措置が命じられた。

5.E社(米国・食肉加工業・罰金: 約2,008 万円相当)

事故の概要

E社は複数拠点で環境規制違反を指摘されている。

ノースカロライナ州では、食肉加工から発生する水質汚濁物質を含む排水が許可基準を長期間超過して放流され、Clean Water Act に基づく違反があった。

また、マサチューセッツ州スプリングフィールドの工場では、アンモニアの管理不備によりClean Air Act の一般義務規定に違反した。

ノースカロライナ州の事案では、窒素・リン等が含まれる排水が河川に流入し水質悪化や富栄養化を招き、生態系や周辺住民の生活環境に影響を与えた。

マサチューセッツ州の工場では、アンモニア漏えいリスクの管理不備が指摘され、周辺に学校や医療施設などがあるため安全・健康への潜在的な危険が懸念された。

罰金・政策変更

EPA はマサチューセッツ州のClean Air Act 違反に対して138,506 ドル(2,008 万円)の民事制裁金を科した。

ノースカロライナ州の水質規制違反については数百万ドル規模の賠償・改善措置が課されており、企業は排水処理設備の改善や長期的な遵守監視措置を義務付けられている。

6.G社(台湾・電子回路基板メーカー・罰金: 約4,880万円相当)

事故の概要

台湾・桃園(Taoyuan)で、電子回路基板メーカーのG社が、委託先である無許可の廃棄物処理会社を通じて、pH 値2 未満の強酸性工業廃水を南崁渓(Nankan Creek)に違法に排出していたことが環境保護署(EPA)の調査で判明した。

廃水には高濃度の銅やニッケルなどが含まれ、法的に専門処理が義務付けられているにもかかわらず、2019 年5 月以降、深夜時間帯を利用して密かに排出していた。

捜査により関係者の逮捕・拘留が進められた。

強酸性の未処理廃水は南崁渓の水質を著しく悪化させ、酸性度の高い排水は魚類や他の水生生物に対して深刻な毒性リスクをもたらす。

また、銅・ニッケルなどの重金属が含まれていたことから、生態系への悪影響や周辺住民の健康リスクが懸念された。EPA は下流にセンサーを設置して長期監視証拠を収集し、違法行為の裏付けとした。

罰金・政策変更

捜査の結果、違法に廃水処理費用を免れ不正利益を得ていたとして、裁判所は被疑者の拘留を認めた。

また、違法利益回収のために関連資産の凍結命令が出されている。

違法廃水処理については台湾の水汚染防止法および廃棄物処理法違反として処理が進められている。

不正利益額は推定で1,000 万ニュー台湾ドル(約4,880万円)を超えるとされ、当局は資産差し押さえを通じて没収・賠償措置を図っている。

7.F社(シンガポール・化学廃棄物処理業・罰金: 約103万円相当)

事故の概要

F社は、シンガポール・Pioneer Sector に拠点を置く有害・危険廃棄物および廃水処理企業である。

2021年5月から9月にかけて、同社敷地から公共下水道へ、揮発性有機化合物を含む禁止排水が違法に流出していることが、PUB(シンガポール国営水道庁)のオンラインセンサーにより検知された。

立ち入り検査の結果、トルエンなど火災・爆発の危険性を伴う複数の有害物質を含む緑色の排水が確認された。

これらの違法排水は、下水道作業員の安全や下水・水再生施設の運営に悪影響を及ぼすおそれがあり、環境汚染のリスクも高い。

このためPUB は、危険物質を含む不正排水に対し、厳格な監視と取締りを実施している。

罰金・政策変更

PUB による取り締まりにより、F社 は違法排出に関して8,500 シンガポールドル(約103万円)の罰金を科せられた。

また、同社には再発防止措置として、敷地内に排水の監視センサーを追加設置するよう命じられた。

シンガポールのSewerage and Drainage ActおよびSewerage and Drainage (Trade Effluent) Regulationsに基づき、有害物質の違法排出は最大で50,000 ドルの罰金または最大12 か月の禁錮、あるいはその両方が科せられる可能性があるが、本件では罰金処分が適用された。

8.I社(ベトナム・廃棄物処理業・罰金: 約70万円相当)

事故の概要

I社は、ベトナム・バリア=ブンタウ省フーミー工業団地に拠点を置く廃棄物処理企業である。

同社は、排水処理施設の運転・管理が不十分なまま、基準を超過する工業廃水を周辺の水路へ排出していたことが当局の立ち入り検査により判明した。

排水中の一部汚濁物質はベトナムの環境基準を大幅に超えていた。

違法に排出された廃水は悪臭を伴い、周辺の水路や小河川の水質悪化を引き起こした。

これにより、地域の水環境および生態系への悪影響が懸念され、周辺住民の生活環境にも影響を及ぼした。

罰金・政策変更

バリア=ブンタウ省人民委員会は、I 社に対し約1億2,000万ベトナムドン(約70万円)の行政罰金を科すとともに、約4.5か月間の排水停止処分を命じた。

また、排水処理設備の是正および環境基準遵守の徹底が求められた。

9.H社(インド・共同排水処理施設・罰金: 約2.2 億円相当)

事故の概要

インド西部グジャラート州アーメダバードのナローダ工業団地にある共通排水処理施設(CETP)を運営するH社は、複数の産業から排出される未処理または基準を満たさない排水をサバルマティ川(Sabarmati River)に放流し、水質汚染を引き起こしたとして、国家環境裁判所(National Green Tribunal:NGT)によって訴追された。

問題は2015 年以降継続的に発生し、NGT は172 の会員企業を持つこのCETP に対して責任を問う判断を下した。


未処理または不十分に処理された工業排水の放流により、サバルマティ川の水質が深刻に悪化し、川の水が人間の飲用や農業利用に不適格なレベルで汚染されていることが研究で示された。

NGT は、CETP とその会員企業の多くが「高度な汚染源」に分類されることを指摘し、この放流水が公衆の健康や水生生態系に悪影響を及ぼしていると判断した。

罰金・政策変更

NGT はH社に対して環境損害賠償として12.42 クローレ(Rs 12.42 crore)(約2.2 億円)の罰金支払いを命じた。

この罰金はグジャラート州公害防止委員会(GPCB)に支払われ、6 ヶ月以内にNEPL と連携してナローダ工業団地の環境改善に充てられることが指示されている。

支払い期限は2 か月とされている。

10.J社(韓国・石油精製業・罰金: 約186億円)

事故の概要

環境省は、J社がフェノール(発がん性物質)を含む工業廃水を規制値を超えて違法に排出したとした。

違反は2019年10月から2021年11月にかけ、同社が実処理設備を設置しないまま関連企業へ排水していたことに起因する。

調査は地方当局と環境省の捜索差押え、検察の追及によって明らかになった。


J社の違法排水にはフェノール濃度が法定基準(1L 当たり1mg)を超過した廃水が含まれており、周辺環境および地域住民の健康にとって深刻なリスクがあったと当局は判断した。

また、同社が排水処理設備を故意に設けなかったことで、環境管理責任の放棄とみなされている。

罰金・政策変更

環境省は1761 億ウォン(約186億円)の罰金を科し、これは同国における工業廃水違法排出に対する歴史的に最大規模の制裁金とされる。

従業員の一部は起訴され、CEO を含む幹部が禁錮刑(実刑判決)を受けたケースもあり、企業の刑事責任も問われている。

11.K社(中国・江蘇省/化学工業・罰金: 約12億円相当)

事故の概要

中国江蘇省において、化学企業K社が、大量のアルカリ性廃液(強アルカリ廃水)を長江および新通揚運河に不法投棄していたことが判明した。

調査によると、同社は100トン以上の未処理廃液を長期間にわたり違法に排出しており、これは中国の水質保護法および環境保護法に重大に違反する行為と認定された。

違法排水により河川の水質が深刻に悪化し、一部地域では上水道の取水停止が余儀なくされた。

水生生態系への影響も大きく、河川環境の回復には長期的な対策が必要とされた。

本件は、長江流域の環境保護に対する社会的関心を高める重大事案となった。

罰金・政策変更

裁判所は、同社に対し約5,500万人民元(約12億円相当)の環境損害賠償金の支払いを命じた。

また、関係者19名が刑事責任を問われ、有罪判決(懲役刑および罰金刑)を受けた。

本件は、中国における水質汚染に対する代表的な環境公益訴訟の一例とされている。

12.L社(ブラジル・鉱業/オンサ・プーマ鉱山・進行中)

事故の概要

ブラジル・パラー州にあるニッケル鉱山Onça-Puma(オンサ・プーマ)の操業に関連して、カテテ川が採鉱活動による重金属(鉛、マーキュリー、ニッケル等)に汚染されているとして、ブラジル連邦検事局が鉱山主の大手鉱業会社L社、パラー州およびブラジル連邦政府を相手取って訴訟を提起した。

Cateté川流域に住むXikrin(シクリン)先住民コミュニティの多数で、毛髪中の重金属濃度が安全基準を著しく超過するレベルで検出されたことが報告されている。

原告側は鉱山活動に起因した汚染がこの地域の飲用水や伝統的生活に深刻な影響を与えていると主張している。

罰金・政策変更

この件は係争中の訴訟であり、2025年2月にブラジル連邦検事局(Federal Prosecutor’s Office)がL 社と関連当局を訴え、Xikrin コミュニティの長期的健康監視制度の設置や環境管理強化の義務付けを求めている。

L社 は責任を否認しているが、2024年にはパラー州環境局との合意が成立し、操業ライセンスの取り消しや是正措置が議論されている。

訴訟は現在進行中で、環境汚染の責任と補償・対応策の明確化が求められている。

出典

1.Hanover Foods Corporation CWA Settlement Summary | US EPA
2.Hanover Foods must pay $1.15M fine, make $1.5M in upgrades over water pollution - pennlive.com
3.Thames Water hit with £123m of fines over sewage and dividend breaches | Thames Water | The Guardian
4.EPA Acts to Protect Public from Harmful Chemical Releases in Springfield, Massachusetts | US EPA
5.Smithfield Meats fined $138,000 over handling of ammonia
6.417: 09-15-99 APPEALS COURT UPHOLDS RULING AGAINST SMITHFIELD FOODS FOR POLLUTING VIRGINIA RIVER
7.Three companies fined in court for illegal discharge into public sewers | PUB, Singapore’s National Water Agency
8.Three firms fined for illegally discharging toxic, hazardous substances into public sewers - CNA
9.Illegal Discharge of Strong Acid Wastewater Pollutes Nankan Creek; Prosecutors Arrest Offenders, Seize Illicit Gains Exceeding NT$10 Million - Aquas Inc.
10.Ba Ria-Vung Tau fines Kbec Vina over illegal wastewater discharge - The Saigon Times
11.Ba Ria-Vung Tau fines Kbec Vina over illegal wastewater discharge - The Saigon Times
12.Ministry of Environment Imposes 176 Billion Won Fine on Hyundai Oilbank for Illegal Wastewater Discharge - The Asia Business Daily
13.Jiangsu wins environmental lawsuit - Chinadaily.com.cn
14.In Brazil, mining giant Vale is sued over metal contamination found in Indigenous peoples | AP News
15.Vale, Govt. and others lawsuit (re heavy metal contamination, Onça Puma, Brazil) - Business and Human Rights Centre
16.水質分析結果に関する不適切事案の報告について
17.シアン流出(令和4年7月3日判明)に係る立入検査の結果について
18.水利協ニュース2025


出典
本資料の情報・画像は、公開されている統計資料・公式サイト・提供元資料を参考にし、適切に引用・掲載しています。

▼中和処理の基本についてもっと詳しく知りたい方はこちら
👉 pH中和の基礎知識はこちらから
👉 納入事例はコチラ

pH中和処理でお困りのお客様は